2023年6月30日に先進版である、Universal Analytics (ユニバーサルアナリティクス)のサービス提供が終了して、それ以前から並行して使われていたGA4だけが使われています。
切り換え当初は多くの方が戸惑って、弊社にも多くの相談が寄せられました。
それから半年以上経ったものの、活用できる事業者はあまり増えていないのが実態です。
その要因の1つとしてあげられるのは、GA4でイベント、セッション、ユーザーが、UAとは同じ用語でもそれぞれの数え方や定義が変わっているからです。
特に、UAではセッションやページビューはイベントベースとは別の軸で測定されていたものが、GA4ではこれらがイベントの一部として扱われるように変わっています。実際に、UAを使っていた人がGA4のデータを扱うときに「イベント名が縦に並んでデータが長くなった」と思うこともあるでしょう。
GA4では、「イベント」を中心としてデータが集計されて、扱う際にもイベントの中身を理解することが重要になってきます。
そこで、今回はGA4のイベントを中心として、「UAから移行した直後で使い方が良く分からない」という方に向けて詳細を解説していきます。
UAとGA4のイベントの違い
UAとGA4の大きな違いは「イベント」の定義の中身です。 UAの「イベント」では、管理画面の左下の「行動」内にあるイベントカテゴリ、イベントアクション、ラベル、値などを設定していました。しかし、GA4ではセッションやページビューなどの指標とイベントが統合されたイメージで、複数のパラメーターとの組み合わせで諸設定を行っていきます。
ここが大きな違いとなります。
GA4の開設とデータストリーム設定
GA4を開設するには、GA4のサイトもしくは既存アカウントの左上から「新規作成」を行います。 階層は「アカウント」→「プロパティ」→「データストリーム」の順でストリームを1個ずつ測定したいWEBサイトと紐づけていきます。GA4のタグ設定
WEBサイト側に埋め込むタグは2種類あります。 ①Google Tag Manager(GTM)をサイトのソースコード、UA/GA4トラッキングコードはGTM経由(初心者向き) ②gtag.jsスニペットをサイトのソースコードに直接埋め込む(上級者向き) ②は途中から出てきた方法ですが、広告など複数のタグを管理する前提であれば①のほうが便利で大半のケースで使われます。
GA4のイベントの種類
アカウントの開設とタグの選定ができたら、次はイベントの設定です。GA4のイベントは大きく分けて4つに分類されます。
1.自動収集イベント
GA4の初期設定では、Googleがデフォルトで設定している自動収集イベントと、ユーザーが手動で追加することで機能するようになる拡張計測機能イベントに分かれます。自動収集イベントには、「ページビュー数(表示回数)」「セッション」「合計ユーザー数」など基本的な指標があります。
2.拡張計測機能イベント
拡張計測機能イベントは、画面内の「データストリーム」→「ウェブストリームの詳細」欄にある「拡張計測機能」で右上のゲージを有効にすることで、計測が可能になるイベントです。コードの編集は不要で、容易に実装できます。拡張計測機能イベントで、計測できるイベントは、下記キャプチャに記載されている項目です。



3.推奨イベント
推奨イベントは、Googleが推奨しているイベントで、管理画面で設定できるものもあれば、GTMやGA4コード自体を実装しての設定できる内容もあります。「ログイン」「検索」「ユーザー登録」「購入(purchase)」などがこれにあたります。
4.カスタムイベント
カスタムイベントは、上記の3つのイベント以外の計測をしたいときに利用するイベントのことです。独自で「ページA→ページBの遷移率を計測したい」「スクロールで50%まで進んだユーザーの割合を計測したい」など任意のイベント名、パラメータ名を設定できます。
「推奨イベント」「カスタムイベント」のGA4内での設定箇所は下記です。

GA4のイベント設定内容の確認方法
GA4で設定したイベントの数値を確認する方法は下記のとおりです。①「管理」→「イベント」で確認
カスタムイベントを設定する際に、デフォルトの計測数が見れますが、管理画面内のイベントで見れます。
②デバッグビューで確認
上記の管理画面では反映が遅れるので、リアルタイムで確認するために「デバックビュー」で確認する方法もあります。
確認できるのは次の条件に限られるので、準備しておきましょう。
・ブラウザChromeでGA4を開く
・事前にChrome拡張機能「GA Debug」をGA4と同じブラウザにインストールする
そして、クリックして「ON」にして該当のドメインを回遊して自分のページビューを計測できるようにする

③GTMで設定したタグの発火を確認
GA4だけで設定できないイベントは、GTMで設定します。GTMでタグを新規作成して、「Googleアナリティクス:GA4設定」を選んで、「G-」で始まる「データストリーム」内のコードを入力します。
トリガーには「All Pages」か範囲が限定されていればそれを設定します。


右上の「プレビュー」で「公開」する前に発火を確認することもできます。GTMのワークスペースの「サマリー」を選択し、画面右上の「プレビュー」をクリックします。イベントタグが発火している場合、「Fired」と表示されます。

別タブで「Google Tag Assistant」というページが開かれるので、「Your website’s URL」にGTMタグを設置したサイトのURLを入力し、「Connect」をクリックします。

すると、別タブでプレビューモードで入力したリンク先が開くので、画面右下に表示された「Tag Assistant」のポップアップが「Tag Assistant Connected」と表示されているかを確認します。

GTMプレビューのタブ「Tag Assistant [Connected]」に戻ると、「Connected!」の表示が出ているはずなので、「Continue」を押します。

設定したタグが「Tags Fired」に分類されていればタグの設定が完了です。「Tags Not Fired」の下にある場合は、タグが発火していないということなので見直す必要があります。

GA4の主な指標
GA4で最初に覚えておいたほうが良い指標は、次のものです。・ユーザー:Webサイトやアプリを訪問したユーザー数。Google IDやChromeのブラウザ情報などによって、同じユーザーが異なるデバイスでアクセスした場合に、同じユーザーとして計測されることも別のユーザーとして計測されることもある。
・セッション:ユーザーがWebサイトやアプリを一定の期間(30分など)連続して利用して終了するまでの一括りの区間。一定時間の間、動きがなければそのセッションは終了して、再び閲覧を開始してスクロールやクリックをした場合は、また新たなセッションとして始まる。
・イベント:ユーザーがWebサイトやアプリ内で行った特定の行動を指す。例えば、ページの閲覧、ボタンのクリック、フォームの送信など。
セッション数のUAとGA4の違い
セッションの開始UA:流入元が変わると新しいセッションの扱いになる
GA4:流入元が変わっても新しいセッションにならない
→GA4では、ウェブとアプリなどの異なる流入元も同じユーザと判断できるので、ウェブとアプリを横断したユーザ行動を把握することができます。
セッションの長さ
UA:(最後のページ表示時間)ー(最初のページ表示時間)
GA4:(最後のイベント発生時間)ー(最初のページ発生時間)
→GA4では、セッション開始時にイベント「session_start」でイベント数=セッション数としてカウントされます。
セッションの切れるタイミング
UA:30分以上操作なし、メディアが変わる、日付をまたぐ
GA4:30分以上操作なし
→デフォルトでは30分以上操作なしだとセッションが切れますが、30分以上以下でも調整可能です。
このようにUAとGA4では定義が異なり、UAではセッション単位の計測でしたが、GA4ではユーザー単位での計測を行うことから、UAよりもセッション数が少なくなる傾向があります。
直帰率の定義
直帰率もUAとGA4で定義が異なり、UAはセッション数が分母だったものが、GA4ではエンゲージメント数が分母になりました。
UA:直帰率=(1ページだけ見て離脱したセッション数)÷(全セッション数)
GA4:直帰率=1-{(エンゲージメント数)÷(すべてののセッション数)}、エンゲージメント率=(エンゲージメント数)÷(すべてののセッション数)
エンゲージメントとは
エンゲージメントはGA4から新たに導入された概念で、「サイトやアプリに対するユーザの操作」でフワッとしていますが、次のアクションなどが該当します。
① 10秒以上継続したセッション
② コンバージョンイベントが発生したセッション
③ ページまたは画面の閲覧または視聴が2件以上発生したセッション
エンゲージメント数は、メニューの「レポート>ライフサイクル>集客>ユーザ獲得」から確認できます。
UAでは直帰率にページ滞在時間が影響を与えませんでしたが、GA4ではページ滞在時間も加味されるようになり、10分以上表示してサイトを離れたセッションは直帰とカウントされなくなります。
そのため、閲覧時間を考慮しないUAと比較して、GA4の直帰率は低くなる傾向があります。

コンバージョン数
UAでは1つのセッションで複数回のコンバージョンをしても、コンバージョンは1回とカウントされたものが、GA4では1つのセッションで複数回コンバージョンすると、コンバージョンした回数分カウントされます。
GA4ではすべての行動が「イベント」ベースで計測されます。UAではコンバージョンの基準に「到達ページ」などが存在していましたが、GA4ではイベントを自分で定義することにより、様々な基準でコンバージョンを計測することが可能です。
またGA4のコンバージョンは、同じくGoogleで提供しているLocker Stadioで可視化が可能です。Looker Studioは流入、コンバージョンなどのGA4データを自動連係によってグラフ化できて便利です。
GA4のコンバージョンデータの詳しい内容やLooker Studioで可視化する方法をこちらの記事にまとめているので、ご覧ください。
メディア・参照元・チャネルの違い
GA4ではWebサイトに訪れたユーザの流入元を、メディア・参照元・チャネルのカテゴリで分類しています。それぞれ違いが分かりにくい部分もありますが、次のとおりです。
① 参照元:具体的な検索エンジンやWebサイトのドメイン(Google・Yahooなど)
② メディア:流入元の種類(自然検索や広告流入など)
③ チャネル:参照元とメディアをもとにしたGA4独自の分類
GA4画面上では参入元やメディア・チャネル別にコンバージョン数などを分類することが可能です。

デフォルトチャネルグループの種類
GA4のチャネルはUAと同じものと変わったものに分かれます。
①Organic Search(自然検索)
→特定の検索サイトからの流入で、GoogleやYahoo!、Bingなどの検索結果から流入した場合に分類されます
②Paid Search(リスティング広告)
→検索結果に表示されるリスティング広告からの流入
③Display(ディスプレイ広告)
→ディスプレイ広告からの流入
④Organic Social
→SocialはTwitterやFacebook、InstagramなどSNSからの流入のうち、有料プロモーションではないもの
⑤Paid Social
→SNSで行った有料プロモーションによる流入
⑥Referral
→他のWebサイトからの流入
⑦Direct
→参照元が判別できない(direct) / (none)に該当するもの(ブラウザのアドレスバーにURLを直接入力、ブックマークからのアクセスなど)
⑧Affiliates
→アフィリエイト広告からの流入
⑨Organic Video
→特定の動画サイトから流入
⑩Paid Video
→特定の動画サイトから流入し、かつメディアのパラメーターがppc、またはcpが含まれるかpaidで始まる
GA4イベントの分別と可視化方法
ここからはGA4内で計測された結果の見方と可視化方法についてです。下記はディメンションを「ページパス+クエリ文字列」「セッションの参照元/メディア」と2つ並べて、それぞれのイベント名について「セッション」「新規ユーザー数」「エンゲージのあったセッション数」「コンバージョン」で並べたものです。

指標によってはいくつかのイベントの値が0になっているものもあります。
ディメンションを「ページパス+クエリ文字列」から下記の別のページ関連の指標に変更すると、0に変わる指標と0でなくなる指標が違ってきます。
ページ関連では他に似たようなディメンション名が出てきます。どれが良いかは人によっても変わるので、何度かあてはめて見やすいものを選ぶのが良いでしょう。
・ページの場所
・ランディングページ
・ページ階層とクエリ文字列
・ページパスとスクリーンクラス
これらの指標から選択して図やグラフを作成していきます。
方法はいくつかありますが、今回はa)~c)の3つについて作成してみました。
a) GA4の「探索」
b) Looker Studio
c) Tableau(BIツール)
a) GA4の探索でイベント別の結果を確認
まず、GA4のレポート機能である「探索」で、「ユーザーの最初の参照元/メディア」×「イベント名」の設定です。
参照元/メディアは「google / organic」でフィルタを設定したので、各イベント名が一列に一回だけ出てきますが、フィルタを外すとそれぞれのイベント名がバラバラに並ぶので、何だか分からないデータになってしまいます。
ここでイベント名を外して参照元/メディアだけのデータにすると、イベント名の合計値が出てきます。

ここに表示されている数値はすべて合計値で一致しましたが、セッション系の指標などが混ざると合計値ではない場合もあるので注意が必要です。
また、先ほどのイベント名をいくつか限定して1つの表で見たいと思っても、縦に並んでいるので見づらくなってしまいます。
「せめて縦ではなく横に並べられたら見やすいのに・・」と思ってもこのままでは見れないので、エクセルでダウンロードして整形しないといけません。
これをLooker StudioとBIツールTableauで横に並べられるのか試してみることにします。
b) Looker StudioでGA4複数指標の集計
例としてECサイトを想定して、全セッション→カート到達→購入完了の流れで、下記のイベント名に限定します。1.session
2.add to cart
3.purchase
Looker Studioで下記のようにフィルタを設定します。

そしてクロス表で次のように設定すると、先ほどのGA4の探索より見やすくなりました。
縦:「セッションの参照元/メディア」
横:「イベント名」
値:「セッション」

イベント名を縦に並べて、横に日付を並べた表を作成することもできます。
時系列で進捗を追いたい運用者にとって便利ですね。

c) TableauでのGA4複数指標の集計
今度はTableauでの表やグラフでの集計についてです。Looker Studioよりも柔軟性が高く、縦横の指標や作成できる指標の幅も広がります。
下記のように3つの指標と、それぞれの比率の指標も横に載せて傾向を把握しやすくしました。

①SS(session)
②Cart(add to cart)
③CV(purchase)
④Cart/SS(add to cart/session)
⑤CVR(purchase/session)
⑥CV/Cart(purchase/add to cart)
参照元 / メディア別にどこが凹んでいるか確認することで、流入を強化すべきセグメントやその先を対策すべきセグメントが見えてきます。
下記のように2軸のグラフで「セッション」「CV」をプロットすることで、傾向が一目で把握できて対策すべきポイントも見えやすくなります。

まとめ
このように、GA4のデータを「探索」「Looker studio」「Tableau」でそれぞれ別々の可視化ができて、カスタマイズ性が違うことが分かりました。今後もGA4の機能は進化していくはずなので、それに合わせて結果を見やすく早く判断できる方法を見つけていくことが重要になってきます。
GA4のイベント名の集計を見やすく整理して、成果改善に繋がる判断に正確に行うことに向けて本記事が少しでも参考になれば幸いです。