昨今のトレンドであるスマート自動入札も、レスポンシブ検索広告と部分一致キーワードでの組み合わせがGoogleの推奨となっています。
ただ、実際の目の前のアカウントにあてはめてみるとなると、その他の要因も絡みあうのでこの一つの概念だけで運用判断できるものではありません。
つまり、マッチタイプを「部分一致」に広げたほうが良いキーワードと、「フレーズ一致」のままのほうが良いキーワードに分かれます。なぜなら、「マッチタイプ」以外の要素が律速になって、CVやCPAの結果に影響していることがあるからです。キャンペーン、広告グループ単位の他の影響も考慮しながらより良い判断をしていかなければなりません。
今回は、実際のアカウントで変更した際に、キャンペーンごとに異なる結果が得られたケースについて結果と考察を記載しました。
キャンペーンの分類
ある人材系サイトで、会員登録者獲得を目的としたGoogle広告アカウントの事例です。このアカウントでは、下記の3種類のキャンペーンに分けて出稿しています。
①指名キーワード掛け合わせ(指名系)
②求職者の検索キーワード掛け合わせ(求職者)
③求人者の検索キーワード掛け合わせ(求人側)
昨年までは「フレーズ一致」が多かったのですが、今年の途中から「部分一致」の割合を増やしています。
「部分一致」のキーワードの新規登録は、「フレーズ一致」をエディターで一括でコピーして登録していました。
新規作成ではなく「フレーズ一致⇒部分一致」で上書き更新することも可能ですが、後から両方の結果を見やすくしたり「部分一致⇒フレーズ一致」に戻す場合も想定して、両方を登録しています。
そして、「部分一致」のキーワードを「オン」、「フレーズ一致」を「オフ」に変更しました。
どちらのほうが良いか傾向を見るために、マッチタイプ別の費用とCPAの結果をグラフにプロットしました。
キャンペーン別の結果
①指名系キャンペーン
ブランド名や自社名など、サービス名そのものを指す「指名キーワード」のキャンペーン結果についてです。指名キーワード単体は「完全一致」と「フレーズ一致」、指名キーワードの掛け合わせは「フレーズ一致」でキーワードを登録していたのですが、大半を「フレーズ一致」→「部分一致」に変更して様子を見ながら調整しました。

数日後には「部分一致」で成果が良くないキーワードを停止して、「フレーズ一致」のほうを再開させました。
なぜこのようになったかということですが、「検索語句」の一覧を見ると登録キーワードから派生して色々な2語の掛け合わせのキーワードを拾って広告表示させているのですが、情報収集のためにクリックしたと思われる語句が多く見られました。
また、キャンペーンの特徴として「CV率が高いが一般キーワードより配信量が少ない⇒できるだけ機会損失が起きないように上限予算額を余裕をみた金額に設定する」という方針でした。
ところが、「部分一致」に変更してCPAが高い(CV率が低い)キーワードを多く拾ったことで、CPAが低い「完全一致」の指名キーワードが十分に配信されないままキャンペーンの上限予算に達してしまい、全体のCPAも高くなる結果につながりました。
結論として、純粋なマッチタイプの比較とは別に上限予算額の律速の影響が大きく、このキャンペーンでは大半を「フレーズ一致」のままにしたほうが良いということになりました。
「指名キャンペーン」の他の商材でも同じ傾向になるかどうかは分からないですが、単純に「フレーズ一致より部分一致のほうが良い」という一言だけでは片づけられないことが分かります。
②求職者キャンペーン
続いて、求職者の掛け合わせキーワードのキャンペーン結果です。
費用も「フレーズ一致」よりはるかに多くかけてCPAが低いので、「部分一致」がかなり有効であったことになります。
指名系キャンペーンと比べるとCPAは高く推移しています。
しかし指名キーワードと比べてキーワードの種類の幅が広いので、「部分一致」による自動入札を用いることで、CVに繋がるキーワードを見つけながら「目標コンバージョン単価」に合わせやすいのかもしれません。
この先も、検索語句の結果を見ながら除外キーワードと新たなキーワード登録をしてさらに成果が良くなっていくことを考えると、このまま「部分一致」を優先した配信を続けていくのが良いということになります。
③求人者キャンペーン
次に求人者系キーワードのキャンペーン結果です。
2週間ほどの期間なので、そのまま続けていけば「部分一致」のほうの成果も相対的に「フレーズ一致」よりも良くなるかもしれません。
これを掘り下げて、キーワード別の結果を見ながら「フレーズ一致」と「部分一致」のどちらかに絞って、検索語句と広告文の訴求内容を見直していくことになります。
品質スコアの結果
その他に特徴的な違いとしては、品質スコアを細分化した「広告関連性」です。他に「推定クリック率」「ランディングページの利便性」もある中で、「広告の関連性」が数値の変化としては表れやすいでしょう。
実際に、「指名系キャンペーン」で月別にどう変化したか確認してみました。

この結果だけで必ずしも悪いとは言えないですが、CPAの上昇と連動して「平均より下」の割合が増えているので、このキャンペーンでは全体的に「部分一致」があまり良くなくて「フレーズ一致」に戻したほうが良いということになります。
後は個々のキーワードにブレイクダウンして、「フレーズ一致」のほうが良いキーワードと、「部分一致」でも大丈夫そうなキーワードに分けていくのが良いでしょう。
まとめ
このように、Google広告で「フレーズ一致」と「部分一致」とどちらが良いかは、キャンペーン別に異なっていて、最終的にはそれぞれのキーワード別に結果を見ながら判断していくのが良いと言えます。今回ご紹介したアカウント内の上記の結果で分かったことをまとめると、次のとおりです。
※※あくまで1つのアカウント内での結果であって、全アカウントに当てはまる傾向ではありません。
- 指名キャンペーン→予算上限額が律速になる場合が多く、「完全一致」「フレーズ一致」>「部分一致」
- 一般キャンペーン→新たな検索語句に当たってCV見込みが上がるので、「部分一致」>「フレーズ一致」
いずれにしても、Googleが推奨する考え方をしっかり理解したうえで、目の前のアカウントでは他の影響を考えながら結果を見て悪化した場合にすぐ元に戻せるようにしながら最適化を進めていくのが良さそうです。
実際に運用するアカウントの参考になれば幸いです。