既存顧客のLTV/利益率改善でポイントとなるのが、「優良顧客を見つけて、個別に切り出して特別な対策を施すこと」です。 その際にCRM分析やCPM分析という専門的な名前の付く分析を行ことが有効とされています。

事業戦略で「新規顧客の獲得には、既存顧客の3~5倍以上のコストがかかる」と言われるように、新規顧客を獲得した後の継続的な利用とLTV向上を考えるうえで、重要な概念であり対策を行う企業も増えています。
今回はこの優良顧客について深堀して、考え方と対策例をまとめてみました。
優良(ロイヤル)顧客の重要性
事業やブランドが発展していくためには、優良(ロイヤル)顧客を見つけて、個別の対応を事業戦略を考えていくことが重要です。この優良顧客の定義は事業によって異なりますが、「熱狂的なファン」「継続的な購入、課金などの利用をしてくれる顧客」のことを主に差します。
全体売上(利益)に占める割合が高く、顧客単価、購入回数が多い傾向があります。
パレートの法則
物事の概念として「パレートの法則」があります。これはあらゆるビジネスや事業にも当てはまる法則ですが、「8割の成果は、特定の2割が生み出している」と言われています。企業の売上に当てはめると「上位約20%の優良顧客が売上の約80%を占める」と言い換えることができます。
実際に程度の差はあるものの多くの事業でこれは当てはまっており、頻繁にサービスを利用している優良顧客を重点的に継続フォローすることに時間を使うほうが、生産性も良く最終的な利益も残りやすくなります。
CPM分析の考え方
CPM分析を考えるにあたり、「やずや」が考案した方式が「やずや式CPM分析」が分かりやすいので、引用して下記に図解します。顧客の購入頻度、回数、金額によって、顧客ごとに5-10段階のステージに分類します。

①初回現役客:設定した期間内で、初回のみの購入実績がある顧客
②よちよち現役客:設定した期間内で、2回以上の購入実績がある顧客
③コツコツ現役客:設定した期間内で、安定したリピート購入の実績がある顧客
④流行現役客:短い(設定された)期間内で、設定された金額以上の購入実績がある顧客
⑤優良現役客:長い(設定された)期間内で、(設定された)特定金額以上の購入実績がある顧客
②よちよち現役客:設定した期間内で、2回以上の購入実績がある顧客
③コツコツ現役客:設定した期間内で、安定したリピート購入の実績がある顧客
④流行現役客:短い(設定された)期間内で、設定された金額以上の購入実績がある顧客
⑤優良現役客:長い(設定された)期間内で、(設定された)特定金額以上の購入実績がある顧客
上記の現役客は、「最終利用日からあまり時間が経っていない顧客」の分類でしたが、逆に長く利用していない(=離脱)の分類ステージも用意します。
⑥初回離脱客:設定した期間内で、初回のみの購入実績があったあと離れてしまった顧客
⑦よちよち離脱客:設定した期間内で、2回以上の購入実績があったが離れてしまった顧客
⑧コツコツ離脱客:設定した期間内で、安定したリピート購入の実績があったが離れてしまった顧客
⑨流行離脱客:短い(設定された)期間内で、設定された金額以上の購入実績があったが離れてしまった顧客
⑩優良離脱客;長い(設定された)期間内で、(設定された)特定金額以上の購入実績があったが離れてしまった顧客
⑦よちよち離脱客:設定した期間内で、2回以上の購入実績があったが離れてしまった顧客
⑧コツコツ離脱客:設定した期間内で、安定したリピート購入の実績があったが離れてしまった顧客
⑨流行離脱客:短い(設定された)期間内で、設定された金額以上の購入実績があったが離れてしまった顧客
⑩優良離脱客;長い(設定された)期間内で、(設定された)特定金額以上の購入実績があったが離れてしまった顧客
ちなみにこれに近いRFM分析では、Recency(最終購入日)、Frequency(購入頻度)、Monetary(購入金額)の3つに分類しますが、時系列で毎月ステージ分類する概念まではあまりないです。
一方CPM分析では10セグメントに分類された顧客層の月別の推移が分かりやすくなり、より的確な対策を施したり細かく顧客分析をしたいときに確実と言えるでしょう。
例えば、データから分かる事実と考察は下記のとおりです。
・離脱層を除いた現役層が増えている→活発に利用している人数が増えている
・優良客が増えているが初回現役客が減っている→新規顧客獲得のための施策が必要
・複数回利用しているが少額の利用に止まっている顧客が多い→個別に利用単価を上げるお得キャンペーンを行うのが良い
このように傾向をつかんでピンポイントに対策を行うことで、同じ売上や顧客数であっても利益率が改善されれば事業としては良い方向h向かうので、CPM分析は有用であるといえます。
CRM分析に取り組んだ結果の改善例
CPM分析に取り組んで利益などの売上、利益が改善した数値感のイメージはこちらです。
これは、新規顧客の獲得に回していた広告費とスタッフの稼働時間分を、「優良客」の購入後の相談に費した改善効果も出ています。
もちろん新規顧客を増やして売上も増やせれば一番良いのですが、それが難しかったり多くの企業では時間的なリソースも限られています。
その中でこのようなCRM分析によって優先度を付けて、「優良客」を見極めてその顧客群だけに集中して業績を改善する考え方が重要になってきます。
CPM分析を行う方法
このようにCPM分析を行うことは有用ですが、CPM分析を行おうとしても知見や過去の経験がないと、実現どころか何をすれば良いかも分かりません。その中でいくつかCPM分析を行う方法を紹介します。1.Excelにまとめて管理
一番簡単な方法としては、Excelで顧客×月別に利用記録や支払額を記録する方法です。分類する際は「HubSpot」でメールアドレスとやり取りの記録を元に顧客ステージを分類して、それを元にExcelなどの形式にまとめます。在籍日数や利用金額なども記入します。
これなら事務作業として誰でもできる初心者向きの方法ではありますが、毎回の更新が必要なことと顧客数が膨大に増えた場合にある程度まとまった状態で数式など使ってExcelを加工するにしても稼働時間も膨大になってしまいます。また、どうしても入力ミスが起きてしまうこともあるかもしれません。
2.連携ツールで自動データ更新
Excelの限界をカバーして管理しやすくでいるツールとして、ベンダーが開発して提供している市販の連携ツールがあります。
どれが良いかは業種、目的、要望によって千差万別ですが、いくつか記載します。
■ Clinic Board:クリニック/診療所の経営指標を瞬時に定量化
■Simplex:通販・EC向けのCRMツール
この他にもたくさんあり、Google、Amazon、Shopifyなど主要なツール間で連携するものあるので、Java Scriptなどのコードを使わなくても扱えるものもあります。
しかし、CPM分析で上述した10ステージの顧客分類ができなかったり、見たいグラフや表がそのツールに搭載されていない場合は、別で用意する必要があります。
導入する場合は、事前に機能や設定内容などを入念に確認する必要があるでしょう。
特にセグメントの分類は、定義自体も複雑であったり、製品によって境界の日数を変えたほうが良いのですが、これらを柔軟に対応しているツールは少ないようです。

「商品が複数あって、別々に境界値を設定したい」「分類方法などカスタマイズ要件が複数ある」という場合は、BIツールのTableau、Power BIなどを使って設定に応じたグラフや表を作る必要があります。
3.BIツールTableauでオリジナル作成
個別の設定を細かく施して、オリジナルのダッシュボードやパラメーターの設定を反映できるのがBIツールです。ここではTableauに絞って解説します。まず、顧客別の利用記録(購入データ、診察データなど)を用意しますが、月ごとの売上やセグメント別の人数と利用額など複数のデータを表示したい時に、社内でそれまで使っていたデータベース(例:Big Query、AWS)のデータだけでは図表に可視化できない場合もあります。
例えば、顧客の利用記録を使って利用していない月も顧客セグメントのどれか(例:優良現役)に分類したくても分類されません。
つまり、カウントされるのが「利用日」ごとであって、それ以外はカウントされない=顧客ステージの分類を記録できない、ということが起きます。

そこでデータソースの用意のための下準備が必要になってきます。
Tableauの場合は手動で調整する代わりに「Tableau Prep」というツールで加工してピポット機能や除外、追加などが行えます。
これによって顧客データを引き伸ばしたり、結合したりすることができます。詳しくはTableau Prep Builderの機能と活用例の記事でもご覧いただけます。

このようなデータ整理の下準備を行えば、望みどおりのグラフや表を作成することができます。
前提としてTableauやBIツールは、扱えるようになるために数年の訓練期間が必要ですが、他にもフィルタがうまく適用されないことや、設定上一筋縄ではできないことがあります。その場合は、BIツールの熟練者に頼むか提供会社のカスタマーサポートに聞いてみることをお勧めします。
まとめ
このようにCPM分析は事業の優良顧客を特定して、LTV(顧客生涯価値)や利益率を改善させるための有力な分析手法で、分析するためにいくつかの方法があります。顧客をセグメント化して、それぞれの人数や利用金額を把握することで、「誰が優良客か」「どのような対応をすれば良いか」 が見えてきます。
そうすることで、企業は最も利益をもたらす顧客群にリソースを集中させることができて、利益改善に繋がります。また、CPM分析をさらに有効活用し続けることで、顧客満足度とLTVの向上が図れます。
CPM分析は、製品やサービスを持つ事業者のリピート戦略のための重要な分析手法なので、本記事が参考になれば幸いです。