過去10年に広告周りで使ったBIツール、AIツールなどの変遷

弊社では広告運用を中心としたWEBマーケティング支援を約10年続けておりますが、数値集計や分析面では、集計の考え方や使用するツールで大きく変わってきました。
毎年新しい手法や機能やツールが出てきては、テストをして比較して案件対応に取り入れて改善するのを繰り返してきました。

年々その変化のスピードは速くなっていますが、今回は10年間の変遷の要点をまとめることで、各手法とツールをご紹介します。
中には本記事をご覧の方も使ったことのあるツールもありますが、使い方や連携方法が違っているものもあると思うので、参考になるかもしれません。

下記の目次の年次範囲は、分かりやすくするためのおよその区切りで書いているので必ずしも正確ではありませんが、目安として参考にして頂ければ幸いです。

それでは、順番に見ていきます。

エクセルのみで図表作成(2014年以前)

Google広告、Yahoo広告の黎明期から2014年くらいまではMicrosoft Officeが主流でした。
運用画面のレポート画面から結果をCSVかエクセルでダウンロードして、エクセルに頑張って図表の整形をしてまとめていました。
初期の頃は作成時間が案件数の分だけ均等に増えていくのですが、他の選択肢もあまり思いつかず気合で乗り切るしかない状況でした。
そのうちに作業を自動化するための策として、エクセルで数式「sumifs」「vlookup」を使ったりマクロで設定したり、考えては設定してまた変えてを繰り返すので数百時間を費やしたのを覚えています。
少しでも複数案件にまたがる同じ作業をまとめて行って、チーム全体の作業時間を短縮をするためにどうすれば良いか考えることが業務の一部でした。

基本的にWord、Excel、Powerpointを全員で使っていたけど、ファイルがフリーズして保存されなかったり、チーム間で共有すると古いファイルを最新だと思って作業する人がいたりした時代ですね(言わゆる先祖返り)。

ATOM-広告作業自動化ツールは初心者に便利

そのうちに、広告レポート自動化と数値管理の簡略化を実現した広告運用者向けのツール「ATOM」も使っていました。
これは便利で、日々のGoogle,Yahoo広告の進捗数値を自動表示するツールとして、運用画面で1個ずつ数値を確認する手間が省けたのが大きく変わった点です。

BIツール、自動集計ツールの活用を促進(2014~2017年)

Tableauは3年以上の我慢が必要

「BIツール」がWEBマーケティング業界に浸透し始めてきたのも、2012-2015年頃でした。
弊社ではBIツールの代表格である「Tableau」は2015年頃から使い始めて、分からない部分があっては調べたり手を動かしてテストするのにはとても苦労しました。BIツールを使い始めた運用者も、エラーで進まず結局元の自動化ツールやエクセルでの作業に戻ったりしていました。

「Tableauを使ってエラーを直すのに2,3時間かかって、結局エクセルでやったほうが早かった」
このようなことも毎月のように起きて「使いこなせれば各段に便利だけど、使いこなせない」という状況で、Tableau社のサポートセンターに何度も質問して電話でやり取りして乗り切りました。
ただそれでも徐々に使いこなせるようになって、Tableauを使ったレポート作業も浸透していき、その他にも広告代理店向けの数値集計、レポート作成の効率化ツールもいくつか出てきました。

「オペレーションの各作業が短い時間でできるようになるから、肝心の考察や顧客向けの対応ができるようになる」と良く言われていましたが、今もこの傾向はあまり変わっていないです。

Power BI-Microsoftは伸び盛り

同時に「Power BI」や他のBIツールも利用者が徐々に増えてきて、そちらも試したりしながらBIツールでデータ集計、レポート作成、分析を活かすスキルを磨いていきました。

この頃はTableauがリーダーポジションだったのでその後はあまり使っていなかったのですが、2023年のマジック・クアドラントでリーダー獲得したりシェアを伸ばしているので伸びていきそうと考えて再度取り組み始めています。

Big Queryは安く使えて必需品

BIツールに繋げるための大規模なデータウェアハウスである「Big Query」は、ほとんどの事業者が検討されているでしょう。
Google Cloud Platformが提供しているので、Google広告やGA4はもちろん他社のツールでも連携がすごく便利でデータ蓄積、クエリの実行機能として多くのアカウントや目的で使っています。

下記のように広告媒体→集計場所→BIツールへ可視化とデータの流れを考える中で、Big Queryを使う割合もどんどん増えていったのはこの頃です。

スプレッドシートアドオンは無料かつ便利だがデータ精度に注意

スプレッドシートのアドオン機能も徐々に増えていって、その度に試して使っていました。
アドオン「Search Analytics for Sheets」でサーチコンソールデータをに出力
アドオン「Google Analytics」でスプレッドシートへデータ出力
アドオン「Google Ads」でスプレッドシート自動出力、CPA改善

DMP、Java Script、Looker Studioで自動化、多様化(2017~2020年)

Treasure Dataは大規模オフライン統合向け

オンラインとオフラインのデータを統合したり、CRMやMA(マーケティングオートメーション)のデータを1箇所に集めて分析や施策に活かす場合にはTreasure Dataが便利ということで使っていた時期もありました。

大量のデータをリアルタイムで更新できて、GAや広告運用の施策にもすぐに活かせるのでとても便利でした。
一方で対象とする企業が割と大規模であったので、小規模事業は使えないということでBig Queryを活かしながらも別の方法を常に模索することになりました。

Google広告スクリプトは中級向けも無料で便利

逆に中堅以上の広告代理店/WEBマーケティング支援会社のほとんどが使っていないものの、無料で便利なのが「Google広告スクリプト」です。

こちらは年々進化しており、ずっと無料で使えるので今でも重宝しています。
Big Queryを使わずスプレッドシートへ10種類以上のデータを出力して、上限容量が大きくないのですが、データの種類によって1か月分/1年分を更新しながらバックアップを取って必要な時に繋げれば十分に使いこなせて、無料で使いやすい利点だけが残って便利でした。
Google広告スクリプトでスプレッドシート自動出力、CPA改善

Google Apps Scriptはデータ精度に注意

Google Analytics4が登場した直後は「運用画面だけではデータが見づらい」「傾向が良く分からない」という感想が多く、Big Queryも使っていたのですが、GAS(Google Apps Script)でスプレッドシートに出力する方法も試していました。
参考記事:Google Analytics4のデータをGASでスプレッドシートに自動出力

結論としては、Big Queryに比べて精度が低くGoogleID1つにつき上限20個のGAS自動トリガーの設定であったため、複数アカウントの運用には向いてないということになりました。
小規模で試したい方に1つの案として説明したものの、この方法はあまり流行らないと思いました。

Data Studio(現Looker Studio)

今では名前を変えた「Looker Studio」はほとんど事業者が使っているものですが、初期の頃は「レポートで出力できない」「機能が全然少ない」ということで、気休め程度にしか使われていないかったでしょう。

しかし年々進化し続けた今では、有料のBIツールの代わりに無料で使われて便利なデータ可視化ツールとして外せないものとなりました。
参考記事:LookerStudioでGoogle/Yahoo広告データを自動連係

今後もGoogle以外のツールとの連携が、どんどん進んでいくことを期待したいところです。

自動化、複数ツール連結で高度連携(2020~2023年)

この頃になると単なる自動化ではなく、ツールとツールを連携してデータを端から端まで一本化に近い状態にする方向性になっていったと思います。
また機能もさらに細かくなり、各ツールがAIを取り入れて最適化やちょっとした整理を状況に応じて行ってくれる便利な部分も出てきました。

Mixed Analyticsは海外発で安く緻密な設定が可能

Mixed AnalyticsはGA4、Meta、他の広告媒体などをAPIを利用して自動出力してくれる便利なツールです。

コードの設定やアカウントごとの設定な詳しくない人には難しく、さらにサポートセンターも英語なので難易度が少し上がりますが値段は安いほうなので、慣れていきながら徐々に使えるようになりました。

このツールは操作が中級者向けではあるものの、指標の並び替えやGA4のEコマース結果の出力が細かいところまでできるのが他のツールにはないところで、ずっと使い続けようと思っています。

多少コードの知識も必要ですが、慣れれば色々なツールに展開できるし自在に使えて便利です。
気になる点といえばYahoo!広告がなかったり、日本ユーザー向きでない点を考慮して欲しいことくらいです。

Yahoo広告スクリプトは復旧明けの24年に期待

2023年2月にYahoo!広告のスクリプトが新たにリリースされました。
Google広告スクリプトでその便利さを体感して、Yahoo!広告も同じような仕様でGoogleスプレッドシートと連携して最新データを自動更新できるので、一気に基盤を構築してアカウントごとにGoogle広告と同じスプレッドシートに出力して自動化していきました。
参考記事:Yahoo!広告スクリプトでスプレッドシートへ自動出力設定

ところが、サーバーへの負荷か予想外のことが起きたのか23年夏頃から「コードの新規作成、編集はできません。
オン/オフの切り替えくらいしかできないです。」という通知が下りその後は手を加えられないまま時間だけ過ぎていきました。
予告通り24年の1月11日より復旧して今は作成、編集ができる状態に戻りましたが、しばらくは様子を見ながら他のツールでの出力と併用で仕組に組み込んでいます。

これも無料で多くのレポート種類を出力できるので、今後の安定化に期待したいところです。

Data Beatは複数アカウント自動化できてエンジニアいらず

Data Beatは複数の広告や広告周りのツールのデータ集計、出力の自動化を手軽にできるツールで、それまで専門エンジニアに依頼していたAPI活用の作業を誰でもできるようにしてくれました。
このツールによって、接続部分でエラーが出たり手動でデータ整理していた手間がなくなり、費用と正確性の両面で恩恵を受けて大助かりでした。

一部のアカウントでこのツールを使い続けて、新規案件のデータ連携とレポート出力をほぼ自動化しながら社内スタッフに管理を任せてアカウント数増加への対策を行っていきます。

GA4アドオン機能 Magic Reportはこれからに期待

GA4はBig Queryに連携してデータ集計するのが最善策に思えますが、やはりUniversal Analyticsのように「スプレッドシートのアドオン機能」を使って出力したいニーズも残っているはずです。
そんな方のために、2022年後半より待望のレポート出力用のアドオンツールがリリースされています。Googleではない会社がGA4仕様で開発したものです。
・Magic Reports
・Reports Builder(当サイト内記事でも紹介)

細かい数値はBig Queryのほうが正確に取得できますが、全体結果や大まかな数値であればこれで足りるので使ってみることにしています。

【2024年以降】即断即決のための基盤構築とAI活用を目指す

これを書いているのが2024年1月なので、新たに使い始めたツールはまだないですが、今後の予想としてやはりAI活用が重要でそれに合わせたツール選びを行うことになるかと思っています。

年明けに落合陽一さんがPIVOTチャンネルで「2024年は超AIの年。生成AIが勝手に進化している。」と語っていたようにAIの影響は無視できず、実際にデータ集計、その後の分析でも多いに活用しています。

何のためにAIを活用するかと言えば、やはり「大量の情報を短時間で収集する」「把握や判断を早くする」ことがあるかと思います。

以前にデータ収集したエクセルを読み込んで中身をAIが解析してくれる方法を紹介しましたが、今は切れ端に過ぎない作業がどんどん作業の中心を占めていくことになるはずなので、いろんなツールが境目なしに繋がってAIで高度化していく時代に合わせて判断、実行を繰り替えしていけるように続けていきます。

最新情報をチェックしよう!